明治は遠くなりにけりーー守山淳

2016-06-14

 111年前の5月27日は日本海海戦で東郷平八郎率いる日本艦隊がロシアの大艦隊

バルチック艦隊に大勝利を収めた日です。日本海海戦は世界海戦史上、類を見ない完全

な勝利でありこの時からアメリカの仮想敵国は日本になったと言われています。
日露戦争を題材にした司馬遼太郎著の「坂の上の雲」は企業の経営者に最もよく読まれ

ている本の一つで、その中に現場設計者兼監督として日本海海戦を勝利に導いた一人の

天才が登場します。それが秋山真之です。
東郷平八郎に「智謀湧くが如し」と評された秋山は天才的な戦術家としても知られてい

ますが艦隊出撃時の打電に「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」を加えたことや戦闘開始直

前に掲げた四色旗(Z旗)の信号文「皇国の興廃コノ一戦ニ在リ 各員一層奮励努力セ

ヨ」の起草者としても知られ、後に「秋山文学」とまで評されています。
ちなみに「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」は秋山の独創ではなく、東京の大本営から送

られてきていた天気予報を簡潔にしたもので、これを電文に書き加えたのが秋山の才能

です。
「本日天気晴朗ナレドモ・・」は文章として優れているため誤解されやすく前途に思い

を馳せ感傷的な気分を含んだ美文と解釈されがちですが、実際は無駄を一切省いた通信

文です。「本日天気晴朗のため、我が連合艦隊は敵艦隊撃滅に向け出撃可能。なれども

浪高く旧式小型艦艇及び水雷艇は出撃不可のため、主力艦のみで出撃す」をわずかな字

数で説明しており、さらには波が高いと重心の高いロシア艦艇は揺れが大きく、そのた

め艦砲の命中率が落ち、装甲が破れれば沈没しやすく、射撃の腕と操艦技術では日本海

軍が圧倒的に優っていたため、見晴らしが良くて波が高ければ我が方にとって有利であ

るという意味を言外に込めています。
また、この戦争で負ければ日本がロシアの植民地になることは明らかでそのため日本海

軍はこの戦闘でロシア艦隊の撃滅を至上命題とされていました。日本の艦隊は以前濃霧

でロシア艦艇を取り逃したことがあり、そのことで無能呼ばわりされたこともありまし

たが、天気晴朗であればその心配はないという意味も含まれています。すなわちこれは

あくまで戦術・戦略的な観点から書き加えられた状況説明のための簡潔な作戦用の文書

であったわけです。
日本海海戦に勝利した後、連合艦隊の解散式における東郷平八郎の訓示(下記)も秋山

の起草とされ、当時の米大統領セオドア・ルーズベルトがこの訓示に感銘し、英語に翻

訳して米海軍の全将校に配布したとのエピソードも残ります。
「・・・神明は唯平素の鍛錬に力め、戦はずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると

同時に、一勝に満足して治平に安ずる者より直ちに之を奪ふ。古人曰く勝て兜の緒を締

めよと」。

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守山   淳   経営コンサルタント オフィス J.M. 代表

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