2020東京オリンピック問題を考えるーー福井義夫

2015-09-30

1.今回のオリンピク開催の目的は何か:
1)オリンピク開催についてのIOCは可能な限り簡素なものにしたいとの意向であっ
た。
    近年のオリンピクは豪華さを競い金がかかり過ぎる。また、競技種目も増過ぎて
 いた。ロンドンオリンピックでは種目を減らしたはずである。
  2)東京都の意向は当時どうであったのかは詳細不明である。
    ・若者に元気を取り戻してもらいたい。(石原元都知事)
    ・東日本大震災の被災者に元気を与えたい。
    ・東京は各種施設を有し、交通網の整備も容易。「低コスト」、「コンパクトなオリ
ンピック」を開催できる、が招致時における東京都の訴えであった。
  3)招致活動の経過に従い次第に意識が変容していったように思える。端的に言えば
国威発揚の場となっていったのではないか。それを決定的に裏付けたのが,2013年
9月のIOC総会における安倍総理の下記の演説にあったと思う。
    「どんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから、財源確保にいたるまで
    2020年東京大会はその確実な実行を保証します」この発言の根底には彼の持論で
    ある「日本を再び世界の中心で輝く国としていく」があるのであろう。
    この発言で日本の政・官・業は喜んだに違いない。今回の“新国立競技場”問題
    は“予算は青天井”起るべくして起ったものだと思う。その詳細を国民は知るよ
しもない。

2.東京オリンピックを成功させるためにはどうすれば良いか。
1)事業主体を明確にするべきである。本来東京都が全責任を負うべきなのであろう。
  2)これだけの大事業を果たすには、責務を全うするに値する統率力・実務能力に優れた最高責任者を選定し、全権を与える必要がある。
    これまでの状況を見る限り誰が責任者か分からない。砂糖に群がる蟻の様に、魑
魅魍魎が跋扈し船頭多くして船山に登るの状況になったとしか思えない。今から
でも遅くはない、組織の立て直しが最重要課題である。
  3)各競技について競技場の選定、場合によっては新設を含む運営の担当責任者を選
定し、各責任者は準備の進行状況を含む詳細を適宜最高責任者に報告指示を得な
くてはならない。 
    現在急遽オリンピック担当大臣が任命されているが、我々はその人の力量・実績を何も知らないし、新しい運営組織が編成されたとの報道もない。人心一新がなければ元の木阿弥であろう。桝添都知事の指導力に期待する。密室で処理するのではなく国民、少なくとも都民には透明性を持って対応すべきである。

3. 新国立競技場騒動について
我々国民にはこれまでの経緯は知らされていない。これほどの大型施設の建設を担当するには、文科省・JSCではコントロール不可能であることは容易に想像できる。この施設の建設を公開入札にするに当たっては詳細な仕様を盛り込んだ(Inbitation to Bid)を作成し、応募(入札)者は全てこれに従はなければならないはずである。又、ITBは国民にも公開されるべきであろう。頭初公表された建設費1300億円(2012年)の算出根拠でもあったはずだが。
今回の騒動を見ると、施設デザインのコンペのみを行い審査委員会が選定し、後のこ
とは宜しく頼むということだったのか。(安藤委員長の言によると建設費には頓着し
なかったようだ)この様な馬鹿げたことがまかり通るのは、1-3)項に示した安倍発言(青
天井)が影響しているのであろう。どのゼネコンが積算したのか不明であるが3,535
億円とは甘く見られたものだ。文科省、JSCと得体の知れぬ“組織委員会”にはこの
様な大事業の処理能力の無いことがはからずも露呈したといえる。
  本来建物の建設に関するITBの作成には、経験豊富なゼネコンを入札により選定し作成を依頼し十分時間をかけてまとめ上げるもので、当然要した経費を支払う。但し、これを請け負った業者は建設工事には入札出来ないはずである。
  再び、デザインを含む再入札を行うとのこと、計画の期間内で全うな入札ができるの
  か疑問である。実際は全て決まっている可能性があるのではと疑いたくもなる。
選定過程の透明性が求められる。
新国立競技場に限らず、各設備には建設後も長期に渡る運営費・維持費を覚悟しなけ
ればならないが、税金を抜きに賄えるはずがない。国民、都民にその覚悟があるので
あろうか

建設費の変遷: 当初 1,300億円で考えていた
          積算 3,535億円
          再検討 2,520億円
          ゼロベースの見直し上限1,550億円

4.その他、東京都の担当各施設について
  これら施設類の新設(改造)工事費についても、新国立競技場と同様の構図が見える。
経緯は以下の通り。
                       立候補   決定後   現在(億円)
1) 武蔵の森総合スポーツ施設        250    351    351
2) オリンピック・アクアチックセンター   321    683    683
3) 有明アリーナ              176    404    404
4) 有明テニスの森              59    144    144 
5) メデイア向け設備
6) 大井ホッケー競技場            25    48     48
7) アーチェリー会場             14    24     24
8) カヌー(スラローム)会場         24    73     73
9) 海の森水上競技場             69   1038     491 
10)その他(代々木歩道橋改修)
   合計                 1394   4059    2218
  中止施設
    夢の島アリーナ
    若洲オリンピック・アリーナ

5.エンブレムについて
この類に全く興味の無い人間がコメントするのも如何なものかと思いながら、感じていることは、
1) 審査が全く密室の中で行われ、入選に至る過程を部外者及び他の応募者も何も知
らされていないこと。アンフェアなことは無かったのでしょうね。
2) 選ばれた作品の基本構成が、○・長方形、三角形で構成されたもので、容易に類似のものが類推できる、即ち盗作騒動の起きやすい構成に見えた。
  今の世の中、検索技術の進歩により、いらざる疑問にさらされたのは気の毒に思
  うが、オリンピック絡みの問題なので製作にはもう少し慎重であって欲しかった。
又、作者が別件で盗作の懸念が発覚したこともあって、取り下げもやむを得ない
    のではないか。
  3)東京、日本らしさが出せれば良いと思う。招致時のもので良いのではないか。

6.結び
  とにかく東京オリンピックはやらざるを得ないが、国を挙げてのこの種の宴の後には
必ずと言っていいほど経済不況が訪れる。1964年当時とは異なり今の日本にはこれを乗り切れる体力があるのかどうか老婆心ながら心配である。ツケを払うのは国民であることを忘れるな。
  
                                   以上

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