ノーベル賞逃がした「平和憲法」――早房長治

2014-10-12

ノルウェーのノーベル賞委員会は10日、2014年の平和賞を、命を懸けて女子教育の権利を唱え続けているパキスタンの17歳の高校生、マララ・ユスフザイさん(17歳)と、インドの児童労働問題の活動家、カイラシュ・サテイヤルテイさん(60歳)の2人に授与すると発表した。この結果、オスロ国際平和研究所(PRIO)などが受賞を予測していた「憲法9条を保持する日本国民」は受賞を逃した。

「憲法9条にノーベル賞を」という運動は昨年5月、一主婦が思いつき、ブログで訴えたことから始まった。その後、いくつかの市民団体による署名運動が続き、署名数は50万近くに達した。いささか意外であったのは国際的反響が大きかったことである。世界各国の多数の個人やNGOから賛同の声が寄せられている。

憲法で戦争や軍隊保持を禁止している国は日本以外にもある。例えば、中米のコスタリカだ。しかし、同国がノーベル賞候補になったことはない。日本が候補に挙がったのは、世界第3位の経済力を持ちながら、戦争と軍隊保持を否定する憲法を維持しているからである。古今東西の歴史を見れば明らかなように、経済力が拡大した国は軍事力の強大化に走るのが通例にもかかわらずである。

憲法9条がノーベル賞を授与されなかったことで安堵したのは安倍晋三首相とその政権であった。世界から高い評価を受けている「平和憲法」を安倍政権が破壊する方向に動いていることが白日に晒されるからだ。安倍首相が国民を代表して賞を受け取ったら、世界中のメデイアから揶揄されるのは必至である。

このような事態は一政権の不評に止まらず、日本外交の大きなマイナスに通じる。ノーベル賞委員会は「平和憲法」を選考対象にしたことを明らかにしている。安倍政権は、今年は恥をかくことを免れたが、来年以降、同じことが起きる可能性があることを忘れてはならない。  (早房長治)

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