日本のエネルギー事情、いまなすべきことーー守山淳
話題のアメリカ大統領選挙。トランプ氏の可能性が出ています。滅茶苦茶だと無視をし
てきた彼の演説を冷静に分析する必要性が出て来ました。彼の安保ただのり論。結局自国
の安全と平和は自らが守る覚悟と体制が必要なのだ、という当たり前の事を指摘されてい
るのだと思います。
現在日本で使われるエネルギーの約4割は石油です。石炭、ガスがそれぞれ2割強。そし
て2013年時点で石油の83.5%を中東諸国から輸入しいます。最大がサウジアラビア
で30.7%。以下UAE22.7%、カタール13%、クウェート7.2%。
天然ガス(LNG)を見ると中東依存度は約3割でカタール18.4%、UAE6%、オマーン
4.8%です。日本の同盟国であるアメリカは自身も石油大国ですが消費量が多いので輸
入も必要でした。それで中東、特にサウジアラビアとの関係をとても重視していました。
ところが「シェール革命」が起こりアメリカは世界一の産油、産ガス大国になり中東への
関心を失いました。現在アメリカは中東の主要な親米国家サウジ、イスラエルと険悪な関
係にあります。親イスラエルのトランプが大統領になれば修復されるかもしれませんが大
きな流れを見るとアメリカは「自国にたっぷり資源があるので中東はあまり重要ではない」
と考えています。
従来中東を重視していたアメリカは中東から日本に石油を運ぶシーラインの安全性にも関
心がありました。しかしアメリカが中東への関心を低下させた今、日本のシーレーン確保
が困難になる事が予想されます。アメリカに替わり中国が益々中東への関心を増して接近
しています。これは中東と日本を結ぶ海路が「中国の支配下に入る」可能性を示していま
す。正に今中国が露骨に南沙諸島を実行支配しようとしている動きです。
世界的戦略家ルトワック氏はその著書「暴発する中華帝国」で『中国は空母を20隻建
造しようとも「制海」は不可能だろう。なぜなら彼らがどこにいようともすべて港にはア
メリカ軍が存在してその奥の陸地にはアメリカの航空機が駐留しアメリカの友好国や同盟
国に囲まれることになるからだ』と書いています。彼は「中国最大の弱点」として「アメ
リカと紛争を絶対に起こせない」事を上げています。つまり「アメリカは制海権を握って
いるので中国と戦えば必ず勝つ」という訳です。この状況は50年たっても変わらないと
彼は言います。
しかし彼の主張は本当でしょうか・・・。「アメリカは本当に制海権を握りつづけるでし
ょうか」という点に関しては「シェール革命で中東への関心を失っている」「トランプ現
象を見ればわかるようにアメリカは内向き、孤立主義になっている」「アメリカの衰退は
加速しており制海権を持ちつづけるパワーを維持できるか疑問」。
一方、中国もどんどん悪くなっていきそうです。既に「2015年、実はマイナス成長だっ
たのではないか?」といわれている中国。今後も1980~2000年代のような急成長は望
めず成長率はますます鈍化していくでしょう。そうなると「共産党の一党独裁のおかげで
我が国は高度成長をつづけることができるのだ」という政権の「正統性」が消滅します。
経済危機は政治危機に転化していく可能性が高くなります。
そうした世界情勢の中で日本はどうするべきなのか? 戦前 日本は石油の92%を輸入
していました。そして約80%をアメリカからの輸入でした。アメリカは「ABCD包囲網」
でこの流れを断ち切り日本は石油を止められた事で無謀な戦争をはじめざるを得ませんで
した。日本は中東を事実上支配しているアメリカとケンカできません。ケンカすればアメ
リカは中東を脅して「禁輸措置」をとらせることができるからです。中国が中東を影響下
におさめればやはり日本への禁油を強制できるようになるでしょう。
しからばどうするか。日本は「エネルギー自給率」をあげていくしかないのです。しかし
今の日本のエネルギー自給率は6%です。これを100%にする政策が必要です。
「エネルギー自給」とは太陽光・風力・小型水力・地熱・バイオなどが思いを浮かびます
がこれらもどんどん開発、普及させる事が重要だと言えます。
しかし今の政権にこうした視点と危機感がある様には感じられません。手遅れにならない
内に自国の安全と平和は他国に頼るのではなく自分で掴むのだ、という意識が必要だと痛
切に感じます。
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守山 淳 経営コンサルタント オフィス J.M. 代表
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早房長治 | 2016.06.08 3:26
守山淳さんの書いておられることは、ある意味では常識論ですが、非常に重要なことだと思います。すべての日本人が考えてみる必要があります。