迷走する安保法制論議――守山淳
先般の多事総論「安保法制~急ぐべきは対中国対策~」は多くの方から反響がありまし
た。自民党は大幅会期延長をして今国会での成立を目指しています。今国会で成立せぬと
二度と安保法制は成案にならないという意見の読者も結構いました。しかし私自身はそれ
で成立しても多くの国民の理解が得られない法律は有事の際に又国論を二分する議論が起
り敏速に実行出来ない可能性がある事から余り意味がないと思っています。
更に米国がサウジを抜いて世界一の産油国になりました。2000年に「米国の石油備
畜は2016年に枯渇する」という予測が米国をしてイラクの大量破壊兵器のウソを言っ
てまで中東での軍事介入で石油確保に走った背景です。しかし今やシェールガス革命のお
蔭でその必要性が無くなりました。米国が急激に中東への関心を失ている事からすれば野
党が騒ぐアメリカの戦争に巻き込まれる論は限りなくゼロに近いと言えます。同時に安倍
総理が言うホルムズ海峡の封鎖もイランは世界第二位の産油国として貴重な外貨稼ぎの石
油を輸出する必要性と重要な漁場である事からこれも限りなくゼロに近いと言えます。
要は今の国会での与野党論争は限りなくゼロに近い中東紛争を前提に咬み合わない議論を
続けているだけで一番緊急で重要な中国・北朝鮮を視野に入れての東シナ海有事に備える
法整備の議論が置き去りにされています。その意味でも一度国会を閉じて対中国対策の法
整備に的を絞るべきだったと思います。
更に安倍総理応援団の議員達による言論弾圧発言で益々実質的審議時間も飛んでしまいま
した。既に支持率低下が起きている安倍政権は更に支持率を下げるでしょうしこんな発言
をする議員が採決をする法案が果たして国民から支持されるのか、とさえ思います。
我が国の国土安全に極めて重要な案件だけに登山と同じで無理をして頂上を目指せば遭難
しますから一度ベースキャンプに戻り違うルートで頂上を目指すべきだろうと思います。