アベノミクス、基本的な評価を忘れないで

2013-07-19

新聞各社の選挙世論調査を見ると、政策についての有権者の関心は極端にアベノミクスと年金などの社会保障問題に偏っていて、原発、憲法改正、TPP、アジア外交などの問題はほとんど忘れられている感さえあります。ところが、最も関心を集めているアベノミクスについても、「株価はどこまで上がるか」とか「何時になったら賃金は上がるか」といった、目先のことだけが議論の対象になっていて、どの様な経済社会を目指しているかといった基本的な問題については野党もマスコミもほとんど触れていません。

3年余、政権を維持した民主党政権は年率3%以上の経済成長を諦めていました。日本は成熟社会で、財政や金融で刺激しても2%台の成長がせいぜいと考えたからです。国民に対しては消費を奨励せず、消費と倹約のバランスを説きました。

これに対して安倍政権は徹底したケインジアン政策を主張しました。金融政策は「ほどほどの緩和」→「超緩和」、財政政策は「緊縮」→「拡張」、消費は「倹約も必要」→「消費は美徳」へ180度転換しました。

問われるべきは、まず、この転換の是非です。民主党政権が目指したのは「公平な福祉社会」であったのに対して、アベノミクスの目指すのは専ら「経済成長」です。そのためには「格差拡大」も厭わないこともいうまでもありません。

高度経済成長は環境破壊などを避けることができれば望ましいでしょう。しかし、成熟経済、少子高齢化社会の今日の日本で高成長を実現するのは非常に困難です。無理をすれば、バブルの再来か、スタグフレーションに陥ります。そうなったら安倍晋三首相のいうように「日本経済を世界の中央に戻す」どころか、日本は下位の先進国に転落しかねません。

「アベノミクスの効用が庶民の懐まで届くか」という視点も重要なことです。しかし、それ以上に大切なのは、「アベノミクスが何を目指しているか」を知り、その是非を判断することです。目先の事の判断にこだわり過ぎて、結局、間違うのが日本人の悪い癖です。いま、日本人はこの誤りをもう1度繰り返そうとしている可能性があります。

シニアの仲間の皆さん、投票の前に、アベノミクスについて、もう一度、じっくり考えてください。(7月19日記す)

 

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