6月の勉強会の報告――早房長治

2016-07-01

参院選の意義と注目すべきポイント

 参院選は中間選挙的な意義を持つ、とよくいわれる。 それは、時の政権が前の全国的国政選挙以降、行った政治と行政について、詳細、厳密に評価する、という意味であろう。それに、今後に向けて、与野党の公約を吟味することが加わる。

  <評価すべき安倍政権の実績>

 今回の参院選に当たって、有権者が評価すべき安倍政権の主な政治的・行政的行為は下記の5点である。

1)アベノミクス 
2)憲法の実質改正と安保法制
3)社会保障システムの変更
4)沖縄県との対立
5)原発の再稼働
6)強権的な政治運営

● アベノミクスーー安倍政権は「道半ばであるが、大きな成果を挙げた」と強弁しているが、国民の約半数が疑問を呈している。首相が強調するように、失業率が下がるなど、雇用は改善されたが、実質賃金や家計支出は一貫して下がり続けている。金融緩和政策も行き詰まった。この結果、経済成長は果たせず、消費増税の再度の延期によって、1000兆円超の財政赤字を返済する可能性はほぼ完全に失われた。 

● 安保法制ーー一昨年7月、内閣の憲法解釈の変更によって集団自衛権を容認し、昨年の通常国会で一連の安保法制を成立させて、自衛隊の海外派兵の範囲を大幅に拡大した。

● 社会保障問題――これまで社会保障の未来図は、旧民主党の野田政権時代に民主、自民、公明の3党によって合意された「税制と社会保障の一体改革」で示されきた。しかし、この構図は消費増税の再延期によって潰えた。現在は将来への見通しが全く立たない状態である。年金は毎年、目減りし、介護費な  どの福祉サービス負担も財源の枯渇とともに重くなって行くと思われる。これは日本中に社会不安を広げるであろう。

● 沖縄の米軍基地問題ーー普天間基地の代替基地を辺野古に建設するかどうかで、安倍政権と沖縄県が鋭く対立している。もし、参院選で、前の衆院選のように、政府与党が敗退すると、辺野古基地建設問題はいっそう混迷し、解決不可能に陥るかもしれない。日米関係に影響する可能性もある。

● 原発の再稼働ーー安倍政権が強力に推進している原発の再稼働に対しては、国民の80%以上が反対している。安倍政権は反対の声に耳を傾けず、さらに、最近、40年超の原発の稼働継続を認めた。

● 強権的な政治運営ーー自公の政府与党は衆院の3分の2、参院の過半数の議席を確保しているため、どんな法案も成立させることができる。数の力による強引な国会運営の典型が昨年9月の衆院における安保法制関連法案の強行採決である。しかも、安倍政権は慣例となっている秋の臨時国会の開催も拒否した。「安倍一強政治」は国会運営だけではなく、自民党の運営でも状況は同じである。

   <参院選において考慮すべき他のポイント>

1)憲法改正問題ーー改憲勢力が参院の3分の2に達すれば、安倍政権は憲法改正に乗り出す可能性が強い。

2)一億総活躍社会ーー安倍政権は今後の政策目標の一つを「一億総活躍社会の実現」に置いている。「一億総活躍社会」とは何か。チェックする必要がある。

3)18歳からに選挙権拡大ーー今回の選挙から選挙権が18歳からに拡大された。有権者数の増加は240万人に過ぎないが、若者が国政に参加する意義は大きい。とりわけ「海外派兵」など、将来に関する問題は、若者が考えて決めるべき問題ではないだろうか。

4)一人区における野党4党の共闘ーー今回の選挙の特色の一つは、民進党、共産党など野党4党が安保法制の廃止と安倍政権の退陣を求めて、全国32の一人区で共闘態勢を組んだことである。安倍首相はこれを「無責任な野合」と批判している。国民の間でも、必ずしも好評ではない。 
                               
○なお、今回選挙の改選議席数は121(自民50、民進43、公明9、共産3)。新聞各社の序盤調査では、自民が過半数、改憲勢力が3分の2(78議席)をうかがう勢い。民進は30程度。                                                (以上)

 6月30日午後の勉強会では、まず、早房が上記のような資料を配布した。安倍政権の実績にはかなり厳しい評価もしているが、他の出席者から異論や反対論はなかった。一方で、出席者の口を突いて出た言葉は「安倍政権の政策や政治行動に国民は満足していないのに、なぜ高い内閣支持率を維持しているのか。その辺を考えてみる必要がある」「新聞各社の序盤情勢調査では、自民、公明の圧勝が予測されている。どうして、こんなことになるのか」といったものであった。

  上の疑問に対する答えはすぐ見つかった。「国民の多くはアベノミクスに不満を抱いているが、野党がきちんとした対案を示さない」「国民の80%以上が原発再稼働に反対しているのに、民進党はその意見を代表していない。あいまいな態度をとっている」というのである。「国民の大多数は消去法で考えて、結局、政府与党に票を投じるほかないと判断しているのではないか」という意見が大勢であった。

 英国のEU離脱や米大統領選のトランプ旋風の行方も話題になった。「英国EU離脱は参院選にも影響するのではないか」「安倍政権に有利に作用するのではないか」といった意見がかなり出た。また、「初めて選挙権を得た若者がどのような行動をするか、選挙が近づいて無党派層が減らないのはなぜかなど、アンノンファクターが従来の参院選より多い」という情報も報告された。

(勉強会では、このほか、非常に興味ある情報がいくつか披露されました。これらについては、次回のブログでお知らせします) (以上、早房長治)

 

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