4月の勉強会報告ーー安倍政権の「女性活躍」押し付けに疑問

2016-05-03

安倍政権が「一億総活躍社会」実現の一環として「女性活躍社会」の旗を振っていることに対して、「挑戦するシニア」の会員からは疑問の声が出た。「個々の女性がどのような働き方をするか、どのような人生を送るかは、個々人が決めることであって、国が権力を振りかざして決めることではない」というのである。

また、「安倍政権が女性活躍社会を振興する本当の狙いは、増大する福祉経費を抑えることではないか」という厳しい発言もあった。「高齢者活躍社会」の振興策も同じ狙いを持つものといえるだろう。

第2次大戦後、1970年代初めまでの高度成長期、男性と女性の役割分担は明確であった。男性は企業戦士として専ら企業のために働き、女性は専業主婦として家庭を守り、子供を育てた。しかし、今は違う。50歳台までの女性の約60%が社会に出て働き、共稼ぎしている。

働く女性を取り巻く環境は非常に厳しい。それは早房が勉強会に提出した報告で明らかである。彼女たちは企業で残業を含む長時間労働を課せられる上に、家事と子育てをこなさなければならない。企業での勤務と子育てを両立させるためには、幼い子供を保育所に預けることが不可欠であるが、今日、保育所への門は狭く、待機児童は、厚労省の調査結果でも2.3万人に達している。

働く女性に対する待遇も悪い。非正規労働が60%超。男性の40%未満に比べてはるかに高率である。その結果、平均収入は月23.3万円で、男性社員の約70%に過ぎない。企業は相変わらず男性社会で、管理職全体に占める女性の割合は12%、、役員にいたってはわずか1.2%である。

経済産業省と関係の深い経済産業研究所によると、日本のホワイトカラーの、欧米と比べた男女別職業構成の特徴は①管理職の割合の男女差が非常に大きいーー女性7.2%、男性36.3%②ホワイトカラーの女性に事務職者が極めて多いーー78.3%、男性は26.5%③専門技術職では男性の割合が女性の倍以上ーー女性8.7%、男性19%、であるという。このような統計を示した上で、同研究所は「こうした状況では、役員に昇進できる女性人材は育たない」「女性の社会進出と子育ての両立支援には、労働生産性を上げて労働時間を減らす職場づくりと、男性の家事時間の確保ができるかが問われる」と指摘している。

女性活躍社会を実現するには、ワークライフ・バランスの改善や、なり手の少ない保育士の月間給与を約10万円アップするなどの具体策を緊急に講じなければならない。しかし、その前提として、政府、国民とも、「女性活躍社会」とは何かを真剣に考え、ヴィジョンを確立することが必要である。

なお、女性の意見として、「女性活躍の議論では、家庭外の活躍ばかりにスポットが当てられ、専業主婦はまったく無視されている。おかしいのではないか。専業主婦も社会的に重要な役割を果たしていると思う」という発言があった。もっともである。今後の「女性活躍社会」についての議論では、専業主婦の評価も忘れないようにしたい。

                                   (早房長治)

女性活躍社会は実現するか
2016年4月26日
福井義夫

1.現政権の提唱する“一億総活躍社会”の内容から類推すると、今後女性は
  昔に戻り馬車馬の様に働き、国の社会福祉経費の削減に貢献するようにさせたい、との思惑が感じられる。
2.本日の議題である女性活躍社会の定義は何か;
   従来男社会と目されてきた組織の中で、男性に伍して活躍する女性のことを言うのか、それともあらゆる分野で仕事に従事している女性を指すのかまた、呼称に抵抗があるが専業主婦をどう評価するのか判然としない。
   前者を指すのであれば、国会議員を初めとする各種議員、官公庁の職員、民間企業(大企業、中小企業)に従事する社員、司法関係及び関連分野、医療関係、社会福祉関連等が考えられる。
 
  各種議員  : 利権の巣窟、元来各個人の能力・適正は問わず一部少数の独特な能力を持つ人種で政治を支配するのを前提とする男社会であるから、可能な限り女性の活躍を制限したいのが本音であろう。現状から推察すると女性活躍を推進し得る場ではないと思う。殆どはお飾り程度か。
  官公庁職員 : 採用に際しては一応厳しい選択を課す。故に採用された人間は優秀(エリ-ト)と目される(特に中央官庁では)。公平に見て選抜試験では女性の成績は男性にひけをとらないはず。しかし、現実は女性の採用は少ない様だ。また採用されたとしても将来ピラミッドの頂上に近づくにつれて女性の活躍の場は減っていく。全て恣意的に決められる世界であるから、優秀な女性に向いている職場とは言えないのは女性自身が良く承知しているのではないだろうか。
          総理大臣の一言で簡単に変化する組織ではなかろう。
  民間企業社員: この少子化の時代、最近は比較的男女の差なく採用されていると思われる。しかし、業種によっては幹部候補生としてどの程度女性の活躍に期待しているかは分からない。
          民間企業では正規雇用者と非正規雇用者が併存しているので、個別に女性の活躍状況を見ていく必要があると思う。
  司法関係等 : 中枢を担うべき人間は男女の差なく司法試験等国家試験の難関を経て誕生するので、女性の活躍の場として期待できるものの人数に限りがあり、一般に言う女性活躍社会とは異質の場かも知れない。
          将来、最高裁判所判事にどの程度女性が起用されるのか見てみたい。
  医療関係  : この分野の関係者は国家試験を経た有資格者であるから、基本的に男女の差はないはずであるが、男社会の伝統が残っていると思われる。後は人間の生命に関わる分野でもあり、能力・努力次第で女性の活躍が期待できる場となってほしいものだ。
  社会福祉関係: 既に女性が比較的拡く活躍している分野であると思う。ただし、従事者の不足を補うには、報酬、施設の拡充など後は政治の問題である。

 要するに、政治が女性活躍を図るためにどのような社会を目指すのか又、どういう社会になってもらいたいのか、財源の裏付けのある具体的な構想を明らかにするのが先決であると思う。最後の判断は国民がする。
                              以上

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