2月の勉強会の報告が今頃になって、申し訳ありませんーー早房長治

2016-04-10

 2月の勉強会は同月26日、「マイナス金利とは何か。私たちの生活への影響は」をテーマに開かれました。
 その後、3月24日の「シニアのためのコンサート」の準備に忙殺されている間に、私のパソコン技術の拙劣さもあって、記録が見つからなくなってしまいました。昨日、偶然、見つかりましたので、早房が提出した資料と、討議の要旨を報告します。また、福井義夫さんがマイナス金利とアベノミクスの関係を分かりやすくまとめて下さいましたので、別稿として掲載します。

 <早房が提出した資料>

 ● 日本におけるマイナス金利――1月29日、日銀の金融政策決定会合で導入が決まる。民間銀行が日銀の当座預金に預ける預金のうち、2月16日預け入れ分からマイナス0.1%の金利を適用する。民間銀行が手持ち資金を日銀の当座預金に貯め込まず、民間企業向け融資やリスク資産投資に回すように促すのが表向きの目的。年初から混迷状態にあった金融・証券市場を円安株高に戻したい安倍政権の強い希望に黒田日銀が応えたという見方もある。

 ● 先行したEU――金融市場でマイナス金利が定着しつつあるのはEUである。ドイツ、フランス、オランダ、スイス、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、オーストリアなどで、その例が見られる。政策金利として最初に導入したのはデンマーク国立銀行で2012年7月。その後、ヨーロッパ中央銀行(ECB)、スウェーデンとスイスの国立銀行もマイナス金利を採用した。政策金利としてのマイナス金利の現状は、ECBが0.3%、デンマークが0.65%、スイス0.75%、スウェーデン1.1%。マイナス金利の狙いは、デンマークとスイスが自国通貨の安値誘導、ECBが景気刺激である。

 ● マイナス金利の利点と欠点――利点としては円安株高への誘導が容易に。また、住宅ローンを含む長期金利が低下し、投資増加の要因になる可能性も。欠点としては、金融機関の利ザヤが縮小し、収益が減少、金融仲介機能が弱体化する恐れが生じる。また、年金や保険の運用が困難になる可能性も。

 ● 日銀の金融機関への配慮――民間金融機関の日銀当座預金残高は約260兆円(1月末)あるが、これについては引き続き年0.1%ないしゼロ%の金利を維持し、金融機関の過度の収益減少を防いだ。

 ● 日銀がマイナス金利を導入して以後の金融業界の動向――一時は日銀の思惑通り、円安株高が実現したが、短期間のうちに円高株安に逆転した。円高は一時、1ドル=110円台に達し、年初、1万9千円超であった株式市場は乱高下を繰り返して、2月13日には、1年4か月ぶりに1万5千円台を割り込んだ。
 
 ● 一般庶民にも影響が及ぶ――長期金利の引き下げに伴って、住宅ローンが大幅に下がった。一方で、3つのメガバンク、地方銀行とも、定期預金金利を一斉に引き下げている。メガバンクは企業預金や個人の大口預金の金利を実質的にマイナス金利にすることを検討している。証券会社はMMFのような国債を中心に運用する商品の販売を中止した。生保各社は保険料引き上げの検討に入った。

 ●今後の展開は――①日銀の狙い通り、民間金融機関の企業融資や住宅向け融資が大幅に増加。経済が成長②日銀があと2,3回、マイナス金利幅を拡大している間に、何らかの形で経済を成長軌道に乗せる③企業の資金需要は乏しく、金融機関は資金がだぶつき、収益悪化。マイナス金利政策が破綻→国債が暴落→膨大な財政赤字を解消するためにハイパーインフレ政策に踏み出しも。

  <討議の要旨>

 ● 日銀が「マイナス金利導入によって、金融機関から企業への貸し出しが増加し、企業の設備投」とマイナス金利の利点を述べているのに対して、疑問を呈する人が多かった。「カネを貸して金利を取られるというのは、常識に反する」「金融機関の経営が苦しくなり、仲介機能が弱体化する恐れがある」「庶民の預金金利も下がり、将来はマイナス金利になるのではないか」など、不安の声が続出した。

 ● 一方、「金利引き下げは企業にとってプラスであることは間違いない」「金利がマイナスになることを重大視する必要はない。従来の金利引き下げと同様に考えればいいのではないか」「住宅ローン金利の引き下げは庶民にとってもプラスとなる」などの意見も出た。

 ● しかし、全体としては、マイナス金利を評価する意見は少なく、「日銀が従来とってきた超金融緩和策が行き詰まったので、苦し紛れにマイナス金利導入に踏み切ったのではないか」という見方も出た。結局、「先行しているEUの例を見ても非常に分かりにくい政策なので、当分、成り行きを静観するほかないだろう」ということになった。

   <付記>

 日銀がマイナス金利政策を打ち出してから2か月以上を経過したが、日銀が狙った効果はまったく実現していない。それどころか、市場は円高株安に動き、政策はまったくの失敗状態にある。しかし、黒田総裁は強気を崩しておらず、マイナス金利を強める構えさえ見せている。日銀がこれ以上、無理な金融政策を続けたら、アベノミクスの失敗に止まらず、日本経済の破綻を招く恐れすらある。

                                              (以上、文責=早房長治)
                     

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