アベノミクスは事実上、破綻、経済は借り手不足で低迷ーー守山淳

2016-04-11

三井物産が戦後初の赤字決算を発表しました。前期連結純利益3064億円の黒字に対し

今期は700億円の赤字の見込みです。三菱商事は前期4006億円の税引後黒字に対し今

期は1500億円の赤字の見込み。両社ともエネルギー部門が強くそれが業績好調を支え

きましたが昨今のエネルギー価格の暴落で大幅赤字を余儀なくされました。

これに対し非エネルギー部門の強化をして伝統的な商売を守って来た伊藤忠商事が
3300

億円の連結益の見込みで業界初の首位に躍り出ることが確実となりました。
世界の政治経済社会は激変しています。三井物産、三菱商事の決算に見られるように
激変

により企業の強みが弱みに変わることもあります。商社の強みはあらゆる業界との商
売が

ある事です。しかし両社は資源バブルに浮かれ一本足打法と揶揄される様に利益の殆
どを

資源頼った結果、伝統的な非資源、顧客商売を軽視しました。激動する環境を先読み
する

のは難しい昨今ですが自社の強みは何かを再確認する一方で複数の強い部門を強化し
てお

くことの重要性が示された商社の決算になりました。
私が現役の頃は商社氷河期時代と言われ三井物産の連結純利益は300億円程度でし
た。
安宅産業、日商岩井、トーメン、ニチメンが消え大手の伊藤忠、丸紅すら倒産の危機
がさ

さやかれた時代です。その後の商社(日本全体もそうですが)は結局中国の成長軌道
に支

えられてきた面が強いと言えます。その中国が過剰設備と景気の悪化で今回の赤字決
算の

大きな要因になりました。今後は如何にチャイナリスクと向き合い成長が期待できる
アセ

アン、インドなどを取り組んで行くのか。経済以外の政治リスク(テロ、イスラム問
題、

移民難民問題、中国の軍事的脅威による日本経済への影響、北朝鮮の核ミサイル攻撃
など)

も含め難しい経営の舵取りを迫られる時代となって来ました。

さて久し振りのクー氏(エコノミストのリチャード・クー氏。守山さんはクー氏のレ

ポートを参考に、この文章を書いておられるようです――早房注)の報告書です。

FRBが3月の利上げを見送っただけでなく2016年の利上げ予想回数を当初の4
回か

ら2回に下げた事が好感され多くの市場が安定を取り戻し市場に大きなプラスとなり
まし

た。処がFRB高官が4月末にも利上げはあり得ると発言して当局と市場のツバ競り
合い

が始まっています。これはFRBが金融正常化に極めて強い決意がある事を示してい
ます。

何故彼らは急ぐのか、と言えば量的緩和で既に法定準備額の16倍もの流動性を市中
に供

給してしまった中央銀行は本当に民間が利益の最大化に向かってカネを借り始めたら
マネ

ーサプライもインフレ率も今の16倍になる可能性に直面するかで、そうなったら市
中に

放出された過剰準備を一気に回収しようとせば市場も経済も大混乱に陥りリーマン
ショッ

ク以来の努力が全て水泡に帰す事になりため、何としてもこの事態を避けねば成らな
い。

故に民間需要が本格的回服する前に問題解決をしておきたいと思っているからです。
しか

し7年間ジャブジャブの金融緩和に慣れ切った市場は「金融緩和中毒」に陥っていま
す。

当局としては患者が禁断症状を示しているからと言って手遅れになる前に正常化を進
める

以外ないと思っています。FRMが心配しているのは株式市場よりも不動産市場で商
業用

不動産は2008年のバブルのピークを既に大幅に超えて上昇しています。この市場

2009年にFRBが積極的に救済をして崩壊を免れました。もし米銀がルールに従
い借

り換えに応じなかったら巨額のデフォルトが発生し住宅バブルの崩壊で米国経済と金
融は

ガタガタになっていたでしょう。しかしこの救済が人々を安心させ今回のバブルの一
因に

成っています。その意味で当分この商業用不動産問題でFRBは苦戦するでしょう。

欧州ドラギ総裁も黒田日銀総裁も本質的な問題を何も解決していません。金融緩和を
した

のに経済は低迷。これは借り手不足の問題です。中央銀行が出したインフレ目標や成
長率

予測はどの国でも殆ど達成されていません。これは中央銀行による金融緩和で景気を
回復

させるという発想自体が論理破綻をしているのに相変わらず中央銀行がもう一歩金融
緩和

をすれば景気は改善すると云っています。これだけ緩和をして景気が回復しない現美
を直

視しないのは従来の経済学の「民間は必ず利益の最大化に向い金利さえ充分に下がれ
ば必

ずカネを借りる」という大前提に縛られいるからです。実態はバブル崩壊で債務超過
に陥

った経験から金利が下がってもカネは借りないという現実に目を瞑っていると云えま
す。

欧米の経済学者は日本経済が1990年以降低迷したのは日銀の利下げのスピードが
遅す

ぎたからだと2000年頃から言い出しました。これを意識したバーナキンFRB議
長は

リーマンショック後、史上最速でゼロ金利まで持って行きましたが彼らの予測に反し
米国

経済は借り手不足で長く低迷しました。これは正に今多くの経済学者が陥っている過
ちと

同じです。

安倍総理にクル―グマン教授らが消費税延長を含む財政出動の必要性を説いたと報道
され

ていますが彼らは何故金融政策が効力がなかったかを充分に理解した上の提言という
より

「景気が良くないので財政もやったらどうだ」と云った程度と言うのが私の印象で
す。

彼らは一年前「何故クー氏は金融緩和を敵視するのか分からない」と批判しました。
最近

はやっと自分達の提案が景気回復の決定打にならない事を認めましたがその理由が民
間の

借り手不在による事までは気が付いていない様です。

金融緩和中毒に陥っている市場から巨額の資金を早目に回収せねば成らない大きな試
練が

これから待っています。金融緩和の本当のコストは解除後に初めて明らかになりこの
政策

が有益であったか否かの判断は解除が終了して初めて判断出来ます。私はその時点で
の結

論は「よくもこんな馬鹿げた事をやってくれたな」という物になると思っていますが
その

結論は最も早い米国でも恐らく5~10年後であろうと思います。

以上です。当初華々しかった異次元の金融緩和は今は話題にも成らりませんがこれは
アベ

ノミックスは失敗という声を選挙を前に封印しているのが現実だと思います。方向転
換が

難しい金融緩和ですから改めるには一刻も早い対応が必要だと思いますが安倍政権に
その

決意はないのだろうと思います。正に日本経済沈没にならない事を祈るだけです。

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守山   淳   経営コンサルタント   オフィス   J.M.   代表

   〒107-0062 東京都港区南青山 3-12-12 南青山312ビル
 604号室

   携帯電話: 080-1075-6266  FAX: 03-6459-
2112
   E-mail :  jun1207@abox2.so-net.
ne.jp
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        電話・ FAX : 03-3796-5566
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コメント1件

  • 早房長治 | 2016.04.13 17:49

    守山さんがいわれるように、世界の企業経営者も消費者も超金融緩和に慣れっこになっている。各国の中央銀行がさらなる金融緩和の手を打っても、マイナス金利の幅を広げても、ほとんど反応しない。それに加えて世界経済の不調で、各国とも「借り手不足」に陥っている。とりわけ少子高齢化の先頭を走る日本はその度合いが大きい。

     このままでは、世界経済はカネのジャブジャブ状態から抜け出すきっかけをつかめないだろう。それだけではない。世界中の人々がインフレにいつ陥ってもおかしくない状態に脅えながら暮らさなくてはならない。

     日本のケースは、国が返す可能性がないほどの借金を背負ってしまった財政状態を考えると、先進国経済でも最悪である。米国とEUも金融正常化は至難の業であるが、日本は不可能といっておかしくない。

     このような全体状況を知ってか知らずか、安倍晋三首相は「アベノミクスによって日本経済はデフレを脱却し、近い将来、高成長軌道に入ることができる」という趣旨の発言を繰り返している。そして、そのために、金融緩和の続行を公言している。

     「日本丸」の船長の頭は狂っている。方向舵は壊れている。そういわざるをえない。(早房長治)

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