低所得者対策ににならない軽減税率ーー11月の勉強会報告

2015-11-29

11月の勉強は25日、「消費税の軽減税率ーーどんなものが望ましいか」をテーマに開かれました。しかし、「軽減税率の効果には疑問が多い」「果たして、逆進性の緩和や低所得者対策に役立つのか」という意見が最初から続出して、中身についての本格的議論には至りませんでした。
そこで、本日は、勉強会の報告ではなく、議論を聴いた結果、早房が軽減税率について考えたことを小論文の形で提供させていただきます。

低所得者対策にならぬ軽減税率案

自民・公明両党は消費税を10%に引き上げる際に軽減税率を導入することに同意したものの、対象商品の範囲をめぐって対立している。軽減による税収減を4000億円以内に収めたい自民党は生鮮食料品に限定を主張しているのに対して、公明党は「生鮮食料品+加工食品」に固執している。国民にとって、どちらが望ましいのだろうか。

一般的に、軽減税率は消費税の欠点である逆進性(低所得者の税負担が高所得者より重くなる)を緩和するために導入するとされている。しかし、厳密に分析すると、所得に占める消費税支払額から見た「軽減率」では低所得者が得をするが、軽減の「絶対額」では高所得者が得をしている。軽減税率の導入によって、どちらが得をするかは明確でない。

にもかかわらず、消費税を採用している国の大部分では、軽減税率は人気がある。ちなみに、欧州連合(EU)28か国中、23か国が軽減税率を導入している。このことから、軽減税率は「経済的産物」ではなく、「政治的産物」といえるだろう。

今日、日本でも同じ現象が起きている。マスコミのインタビューに対して、国民の大多数が「軽減税率の対象は広い方がいい」と答えている。確かに、低所得者は少しでも支出の少ないことを望むだろう。だが、軽減税率によって税収の目減りが大きくなると、政府が消費税率全体のさらなる引き上げを目論む可能性のあることを、国民は忘れてはならない。

こう見てくると分かるように、多くの国民にとって、自民と公明の案は「どっちもどっち」ということになる。両方とも逆進性を緩和する方法にも低所得者対策にもならないからだ。民主党政権であった3年前、自公両党も賛成して成立した税制抜本改革法には、逆進対策として軽減税率のほか給付付き税額控除、総合合算制度が明記された。ともに低所得者対策で、給付付き税額控除は支払った消費税を控除ないし返還する仕組み、総合合算制度は医療や介護、保育の自己負担を個人ごとに合計し、上限を設けるシステムである。これらの方が軽減税率よりよほど優れている。当面は軽減税率で痛税感を緩和するとしても、近い将来、まともな低所得者対策に転換すべきである。

自公両党が対立している「生鮮食料品だけを対象にする」か「加工食品を加える」かについては、どちらでもいいが、税の減収額を多くした結果、予定していた社会保障政策を一部、取り止めにしたり、国債発行額を増やすことがないようにしなければならない。

                                     (早房長治)

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