「日本の岐路」戦後70年の罠ーー守山淳

2015-01-16

 

今年は太平洋戦争終戦70年目です。丁度一年前の1月7日に「多事総論:いつか来

た道 危ない安倍外交」と題して発信をしました。その危なさは今も残っています。否

先般の総選挙の大勝で益々危うさが加速する可能性があります。安部総理は戦後レジー

ムからの脱却を声高に叫び種々の異論もある中で集団的自衛権を閣議決定で容認しまし

た。大勝で長期政権の基盤を作った事で総理の最終政治目標である憲法改正にひた走る

のでしょう。自分の代で無ければ出来ないと信じている様に感じます。事実、選挙後の

記者会見で憲法改正への意欲を示しました。

 2008年にアメリカ発の「100年に1度の経済危機」リーマンショックが勃発。中

国はアメリカの没落を確信し露骨に国益追及を始めました。特に東シナ海、南シナ海の

完全支配に向けた動きを活発化させ2010年には尖閣中国漁船衝突事件が発生しまし

た。その時に中国は全世界に向けて「尖閣列島は我が国固有の領土であり核心的利益で

ある」と宣言しました。日本に対しレアアース禁輸など理不尽な制裁を課し世界を驚か

せました。2012年に日本政府が尖閣を国有化すると日中関係は戦後最悪になります。

2012年11月、中国代表団はモスクワで驚きの戦略を提案しました。なんと「中国、

ロシア、韓国にアメリカを加えて【反日統一戦線】を創ろう」という提案です。以後中

国は全世界で「日本は右傾化している」「日本は再び軍国主義化している」「歴史修正

主義が強まっている」というプロパガンダを強力に展開し成果を挙げて行きました。

その中国の動きを甘く見ていたのか安倍総理は2013年に靖国を参拝して中国のしか

けた罠にはまりました。小泉総理は在任期間中6回も靖国を参拝していますがアメリカ

は殆ど「ノーリアクション」でしたが安倍総理の靖国に参拝に対しては中国、韓国に加

えアメリカ、英国、EU諸国、ロシア、オーストラリア、台湾など多くの自由主義圏の

友好国からも非難の声が挙がりました。正に日本を世界から孤立化させる中国の戦略は

成功し掛かっていました。しかしその後の「歴史的大事件」で日本、安倍総理は救われ

ます。それはロシアによる「クリミア併合」です。アメリカからすれば「プーチンはヒ

トラーの再来」ですがロシア側からすれば原因はアメリカにありです。2012年ヤヌ

コビッチ大統領が失脚しロシアに亡命しました。彼は民主的選挙で選ばれた大統領です

が親ロシアでした。ロシアの主張は米国が仕組んだ革命で大統領は国を追われ誕生した

政権は欧米の息の掛かった親欧米新政権でクリミア半島のロシア黒海艦隊を追放しその

場所にロシアの宿敵NATO軍を招きいれる意向を示していた為です。これが実現する

とロシアの直ぐ隣にNATO軍が駐留する事になりプーチンは大統領からすればロシア

の安全保障確保に重大な支障を来た為にクリミアを併合したという言い分です。

野心を挫かれたアメリカは当然反発し日本と欧州を巻き込んで「ロシア制裁」を強化し

ました。靖国を参拝した安倍総理とクリミアを併合したプーチン大統領。どっちがアメ

リカの脅威か、といえばアメリカ人の全員がプーチン大統領と言うでしょう。日本をプ

ーチン包囲網に参加させる必要があるアメリカは安倍総理がバイデン副大統領の警告を

無視して靖国参拝を行った事を不問に臥しました。しかし前回も記した通り孤立したプ

ーチンは欧米がプロパガンダしている様に「世界の孤児」にはなっていません。中国は

アメリカの制裁要求を完全無視してロシア側に付きました。中国はロシアの石油・ガス

を必要としていますしロシアの最新兵器も必要としています。

この制裁で世界の対立軸が鮮明になりました。日本は北方領土問題を抱えていますが欧

米側に付いて制裁に参加しました。これで欧米+日本と中国・ロシアの対立構図が出来

ました。中国が画策した対日包囲網作戦は実現寸前で頓挫しました。

 しかし我々はこれで中国が「反日統一戦線構築戦略」を諦めたと思ってはいけません。

中国の対日戦略は「日米同盟を破壊し日中での紛争・戦争時にアメリカが日本を助けな

い状況を作りだす事」でありその成功の延長に尖閣列島の確保と出来れば沖縄も奪うと

言う核心的戦略があるからです。そして今年「終戦70年」という年は中国にとっては

絶好の好機と捉えていると言えます。戦勝国の国々では色々な記念行事が予定されてい

ます。「中国、アメリカ、イギリス、ソ連は一体化してナチスドイツと日本と戦った同

志である」という過去を思い出させる事ができます。中国にとって自分達の主張を裏付

ける「根拠」「証拠」が必要になります。それは何かといえば一つは「靖国参拝」です。

このプロパガンダは既に世界に可なり浸透している事は上記の通りです。

今年は更に二つの問題に焦点が当りそうです。一つは「安倍談話」です。評論家の青山

繁晴氏も「総理はわざわざ問題を作っている」と指摘してます。どんな談話になるか。

既に中国・韓国から注文が飛んでいますし米国政府からも注文が付きました。「村山談

話」と同じ談話は出せないと思います。同じ内容なら改めて出す意味がありません。例

えば「日本は侵略国ではない」というニュアンスの談話を出せばどうなるか。多くの保

守陣営や国民も「あっぱれ!」と喜ぶでしょう。しかしその事が如何なる結果になるか、

という事を冷静に判断する必要があります。プーチン大統領が「クリミア併合」を断行

した時にロシア国民は大喜びしましたがその後「過酷な制裁」を課されルーブル暴落と

インフレで生活が苦しくなるなどと考えた庶民はいなかったと思います。

「保守派を喜ばす安倍談話」の結果はどうなるか。中国の主張である「日本は歴史の修

正を目指している」の証拠になります。「歴史の修正」とは何かといえば「戦勝国の価

値観・秩序を否定し日本は悪くない」との主張だと勝国からは見えるという事です。

我々日本人にはこの歴史観修正は嬉しい面もありますが戦勝国側は決して受け入れらな

いし許さないと思います。詰まり「安倍談話」は内容次第で「アメリカ、イギリス、中

国、ロシアを同時に敵にまわす危険性」を秘めているという事です。安倍総理は「支持

基盤である保守派の喜ぶ談話を出せば世界的に孤立し中国の罠にはまる」「戦勝国を喜

ばす談話を出せば支持基盤である保守派を幻滅させる」という非常に厳しい状況に自ら

を追い込んだと言えます。一番良いのは「安倍談話」など出さない事です。

もう一つの問題は「憲法改正」です。選挙で大勝した安倍総理はいよいよ憲法改正に意

欲を見せ始めました。今は多くの国民はアメリカ製憲法を神聖視はしていないと思いま

す。必要なら改正し日本人自身の手で憲法を作れという声も結構聞こえてきます。しか

し事実としては憲法改正を一番喜ぶのは習近平主席です。日本がアメリカ製憲法を改定

すれば日米関係は悪くなる事はあっても良くは成りません。日米関係が悪くなれば尖閣

列島、沖縄を狙う中国は大喜びです。その意味で日本が中国の罠にはまる憲法改正は今

の時点では裂けるべきだと思います。安倍総理の悲願かも知れませんがそれが国益に合

わないのであれば皆で大反対すべきだと思います。特に「終戦70年」というキーワー

ドを利用して再び反日統一戦線構築に邁進しようとする中国の罠を理解し「安倍談話」

「憲法改正」など中国のプロパガンダの正当性を裏付ける様な言動は極力避けるのが国

益だと思います。日本が中国の罠にはまれば「いつか来た道」を歩み始める事になるし

これを見事クリアできれば日本は安泰でいられると思います。

新年に当り天皇陛下が文書で所感を公表しました。そこには今年は戦後70年の節目

に当たることから『この機会に満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び今後の日

本のあり方を考えていくことが今極めて大切なことだと思っています語られていま

す。今の安倍総理の方針に異論を唱える様な内容で政治事には不介入の皇室の基本から

すれば異例とも言える所感です。実際に戦争を体験し戦後の荒廃を目にして来た陛下か

ら見ると安倍政権の危うさを感じているのかも知れません。

 

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