中国の脅威に対抗できるか、懸念される米外交と沖縄県民の動きーー守山淳

2014-12-20

<歴史に学べ、翁長・新沖縄県知事の夢の危険性>

沖縄県知事選挙で現職が敗れ前那覇市長の翁長雄志氏が勝利しました。彼は「日米安保破棄」を訴えています。

「米軍を沖縄から追い出せ派」の人たちは「国土面積0.6%の沖縄に全国の74%の米軍専用施設が集中している。これは本土が沖縄を差別しているからだ」と言います。確かにこれは大きなな負担だと思いますがそれは差別からでは無いと思います。なぜ沖縄に米軍が集中するのか。当事者であるアメリカの元沖縄総領事ケビン・メア氏は彼の著書「決断できない日本」で次の様に言っています。

『日米最大の問題は「中国」である。アメリカは日本防衛と日本における抑止力向上に必死に取り組んでいる。それは日本周辺の安全保障からみた環境は実に厳しいからだ。特に中国の動向。中国は「第一列島線」の確保を目標にしている。即ち、中国の戦略構想では九州ー沖縄ー台湾ーフィリピンーボルネオに至るラインを第一列島線としこれを対米防衛線と設定、第一列島線には尖閣諸島などの南西諸島も含まれ有事にはこの範囲内に制海権・制空権を確保して米太平洋艦隊の進出を阻止する態勢を構築しようという戦略だ。中国はこの第一列島線に沖縄を含めている。有事の際、中国は沖縄を支配しアメリカとの戦いの最前線にすると言う構想でその為に「有事」のずっと前から沖縄を支配できる態勢を整えておかなければならず中国領土的野心は尖閣諸島だけに留まらず沖縄本島そのものにまで舌なめずりをしている』

中国は沖縄を本来は自国領と主張しその「回復」を唱え始めています。最近、中国商務部は息のかかった企業を通じて沖縄の不動産や土地を活発に購入しています。中国が日本各地の土地を買い漁っていますが沖縄もそのターゲットになっています。沖縄に米軍基地が集中しているのは「差別」ではなく沖縄がもっとも中国に狙われているからです。米軍が沖縄に集中している事でで沖縄は共産党の一党独裁国家中国の支配下に入らずに済んでいると言えます。

中国は最近「日本の領土は戦勝国が決定すべき。琉球が日本に属するか如何か再審議が必要」と中国紙が報道しています。要は「沖縄は日本に属していない」と言っている訳です。69年前中国、米国、英国の3カ国が「米英三国を促す日本投降の「ポツダム公告」を宣言しました。「ポツダム宣言」の8条に「日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに吾等の決定する諸小島に限られなければならない」と定められています。日本の

領土は「本州、北海道、四国、九州」に限定されその他の島については「戦勝国が決める」と書いてあります。中国はこれを拠り所に「尖閣も沖縄もその他の島であり日本の領土ではない。それが日本の領土かどうかを決めるのは中国を含む『戦勝国』だ」というのが中国の主張です。これに対し日本は確りした反論をしていません。

しかし中国の建国は1949年です。第2次大戦が終わったのは1945年ですから今の中国は第2次大戦後に誕生した国ですから戦勝国ではありません。日本と戦ったのは蔣介石が率いる今の台湾です。2次大戦が終わっ

た時には存在していない国が戦勝国という大ウソを付いています。沖縄は1945年アメリカの統治下に入り1972年5月戦勝国アメリカから日本に返還されました。竹島が韓国領ではなく日本領であることもアメリカが決めました。しかしアメリカの没落もあり中国政府は全世界で「尖閣は中国固有の領土である」とプロパガンダを開始しました。

中国の最近の言動から見れば新知事の主張する「日米安保を破棄し米軍が出ていけば中国人民解放軍が沖縄を占領する」事になります。沖縄が独立すると沖縄は自国領だと主張している中国が必ず沖縄を事実上支配下に入れ

ます。中国の支配下に入ったチベットも新疆ウイグルも悲惨な目にあっています。翁長知事は選挙運動中「琉球語」であいさつをし「沖縄アイデンティティーの復活」を呼び掛けましたがそれができるのは「民主国家日本」

にいるからです。新知事を支持した沖縄の方々は今の自由を捨てて中国の傘下に入る事を是認しているとは思いませんが日米安保破棄は結果として中国領になるという道に繋がる事をもっと認識すべきだと思います。

日英同盟は最初は対露同盟として結ばれました。ロシアを刺激したくない伊藤博文は反対し満州をロシアに与て朝鮮を支配する「満韓交換論」を唱えました。彼が外遊している間に山県有朋と加藤高明や小村寿太郎など

外務省主流が結んだのが日英同盟です。世界最大の大英帝国と極東の新興国が同盟を結ぶという極めて有利な条約でした。日本が日露戦争に勝てたのもイギリス資本が日本の国債を買うなど補給面で協力して呉れた事が大

きかったと言えます。しかし日露戦争が終わると国力の衰えたロシアは協調的になり軍事同盟としての日英同盟の存在価値は薄れました。そんな中で第1次大戦が勃発。イギリスやアメリカやフランスからの度重なる要請にも拘わらず日本はヨーロッパ戦線には参戦しませんでした。背景に「参戦は日本にメリットがない」という国内世論の影響も大きかったと言えます。議会では尾崎行雄が世論を背景に参戦に反対しました。日露戦争であれだけ日本を支援して呉れた英国の恩を忘れた日本の態度にイギリスの不信も強まり辛亥革命後の中国をめぐっての権益が対立する様になります。

これが同盟解消の最大の原因ですが同時に日本の台頭を警戒したアメリカが「日英同盟は日本の大陸侵略を援護するものだ」とイギリスを批判して日英の離反を図りました。結果、1921年に日英同盟は解消されました。

この歴史に学ぶなら落ちぶれたとは言え世界の覇権国アメリカとの同盟破棄が如何に国益に反するかは明らかです。日本憲法の「平和主義」のおかげで戦後ずっと平和を維持できたと思うのは大きな間違いで核戦争の時代に単独で平和を守ることはできない中で日本はアメリカの核の傘に入る事で実質的に核武装している。しかし日本が第1次大戦の時の様に「ともに血を流す」事を拒んでいると同盟関係は保てなくなるリスクも認識すべきだと言えます。日英同盟を失って孤立したことがその後の日本外交の迷走と軍部の暴走の遠因になり同盟の解消から10年も経たない内に日本は侵略戦争の泥沼にはまりこんでしまった歴史の教訓に学ぶ事だと思います。

<オバマ大統領によって米のアジア外交は大転換している>

世界の警察と言われた米国がイラク戦争の泥沼化と多くの米国青年の血を流した事でブッシュの次の大領選で「貴方の息子を二度と血を流す事はしない」と訴えて大統領に就任したのがオバマです。それが故に中東からの
米軍撤退を進めました。その結果がイスラム国の様な異様な集団の台頭、ロシアのウクライナ介入などを許しました。今回のイラク空爆も単独ではなく多くの同盟国を募っています。

米国が建国以来進めて来た西へ、西への領土拡大政策がインデイアンを虐殺してSFまで到達。更に太平洋を渡りハワイ、グアムを傘下に入れ、スペインと戦ってフィリピンを手に入れました。その伝統的西進政策が中東での撤退に象徴さ
れる通り方向転換に向っています。これは何れ日本からの撤退にも繋がると思います。沖縄での反米運動もあり、今回の知事選での辺野古移転反対、日米同盟反対の知事の当選の民意を受け沖縄基地のあり方を米国は真剣に考えると思います。特に中国のミサイルの性能向上に伴い沖縄まで届く様になった事で沖縄一極集中の危険性が指摘されました。

2017年頃には朝鮮半島の情勢次第ですが在韓米軍の撤退を決めています。沖縄の基地の分散をどの様に進めるか分かりませんが海兵隊をグアムに移転、横須賀の海軍をハワイにと要はハワイ、グアム、アラスカという太平洋の真ん中まで撤退するという大きな流れだと言えます。

そうなると中国は如何するか。既に中国は米国に対しハワイを起点にして米国と中国で統治しようと提案しています。1992年、反米運動を受けてフィリピンの米軍が撤退しました。その隙間を縫って中国が領土を武力で占拠しました。今年米とフィリピンは米軍が自由に比国の施設を使える協定を結びました。中東で米軍が撤退した後に反米勢力が進出したと同じで極東から米軍がハワイまで撤退すれば反米勢力=中国が進出して来る事は確実です。尖閣のみならず既に我が領土だと言っている沖縄に対しも露骨な占領行動を始めると思います。それに対し日本は如何なる準備をするのか。

先月の沖縄知事選、今回の総選挙で沖縄県民は明確に「基地はNO」の意思表示をしました。民主国家アメリカもこの民意を無視できないと思います。安倍政権は逆に民意は無視し辺野古への基地移転を粛々と進めると言っていますが簡単ではなくなりました。カネで横面を張り上から目線の歴代内地政権に対する沖縄県民の感情的反発が高まっているのだと思います。しかし中国の戦略を踏まえ沖縄の置かれている

状況を見た時に沖縄県民は

米軍基地撤去により中国の傘下に入り事も已む無しとしているのでしょうか。この辺
りは反米・反日一辺倒の現地マスコミが一切報道しませんからどの程度の情報や理解があるか不明ですので本音の部分は良く分かりません。

日米同盟で米軍が何時までも沖縄や日本を守って呉れると信じ込んでいる方々は多いと思いますが米国の最近の外交姿勢を見て居ると我々も目を覚まし自国は自分達で守る覚悟と体制作りが必要になったと感じます。

先般、産経新聞ワシントン客員特派員である古森義久氏の掲題の講演を聴く機会がありました。同氏は日本は戦後最大の危機的状況に置かれている、と結論付けて居ます。中国は戦略的に要人の米国訪問を進め年中色々なイベントを活発に行い存在感を増していますし学者、留学生も増大しており撤退する日本とは正反対の動きをしています。米国も中国を継続的に分析しているが「協力と対立」「競争と協調」という対中姿勢で揺れている。

中国の急増する軍事拡張を当初は台湾問題への対応と理解していた米国は中国の本音は「米国主体のアジア安保体制を変えたい」という処にあるという理解に今は変わっている。中国は米国をアジアから排除し古き良き大中華民国の時代に戻す事を目指し種々の手を打っている。中国が米国に呼び掛ける「新
型大国関係」とは中国周辺の諸国・海域を中国の支配下に置く事でありその為に既存の親米関係を疎遠にする戦略を進めている。

中国は相手が軍事的に弱いと見れば力でねじ伏せる。ベトナム、フィリピンでの米軍撤退と同時に領土を奪った事、チベットなどでの虐殺を見れば良く分かる。尖閣列島も中国は絶対に譲歩も妥協
もしない。日本が譲歩すれば一歩前に出る。最終的には米国を追い出しこの地域を中国指導の下に置くまで今の
姿勢を貫く事は間違いない。

オバマ政権は中国と全面的に武力衝突の意思はなくその事知っている中国は危険な挑発行為を続けている。米国でも無人島の尖閣列島の為に軍事行動をする事への反対論を多くその意味で同盟国は
何がなんでも守るという事は期待してはいけない。

久し振りに日本に戻ると日本は極めて健全な国家で安心、安全、社会制度も人間の
質も世界に冠たる素晴らし

い国である事を実感するが何故か国家安全の問題になると自国の自衛対策を危ない、
危ないと騒ぐ不思議な国に

映る。何故、日本人はそんなに自国や自分達が選んだ政権を信頼しないのか。アジア地域制覇の野望を持って着々と手を打っている隣国がある中で日本の平和ボケは驚くばかりと言える。中国は日
本の大都市(東京も大坂も)攻撃出来る中距離ミサイルを保有している。しかしこのミサイルは米ソ冷戦後に破棄合意をした為に米国は持っていない。これを武器に中国が日本を脅しに掛かる事は今の日米関係からは非現実ですがそのリスクがある事を我々は知っておく必要がある。

以上が古森氏の警告です。残念ながら世界の情勢は善意だけでは成り立たないという事です。災害も国防も「備えあれば憂いなし」だと言えます。

*************************************
****

守山 淳 経営コンサルタント オフィス J.M. 代表

〒107-0062 東京都港区南青山 3-12-12 南青山312ビ
ル 604号室

携帯電話: 080-1075-6266   FAX: 03-6459-
2112

E-mail :  <mailto:jun1207@abox2.so-net.ne.jp> jun1207@abox2.so-net.
ne.jp

URL :     <http://officejm.com/> http://officejm.com/

自宅: 〒107-0062 東京都港区南青山 4-15-16-301

電話・FAX: 03-3796-5566

*************************************
****

 

 

 

コメント1件

  • 早房長治 | 2014.12.23 2:15

    沖縄県民が「差別」に反発するのは当然

    守山淳さんの2つの論文はいずれも一読、再読に価します。事実調査は行き届いていますし、論理も整っています。しかし、いくつかの重要な点で賛成しかねます。

    まず、明治初年の「琉球処分」以来、今日に至るまで、日本政府はたびたび沖縄県民を差別的に扱いました。とりわけ、1945年の「沖縄決戦」では、本土決戦(実際にには行われなかった)のために時間稼ぎに、県民約9万4000人を犠牲にしました。将兵を合わせた死者は約19万人に達し、沖縄本島はほぼ完全に破壊されました。第2次大戦敗戦後も、沖縄以外は52年に再独立を果たしたにもかかわらず、米軍による沖縄占領は72年まで続きました。しかも、沖縄返還時には「核付き返還」となり、返還後は沖縄における米軍基地はむしろ増加しました。

    沖縄の人々は本州などの人間よりおとなしく、忍耐強い性格です。彼らは心の底に強い不満を抱きながら、それを表に出さず、じっと我慢してきました。70~80年代は非常に貧しかったので、政府がばらまくカネを受け取り、米軍特需で生活費を稼ぐほかありませんでした。しかし、生活水準がある程度、向上すると、我慢も限界に達します。今日、起きている政府・自民党への強い反発の背景には、沖縄県民のギリギリの思いがあるのです。そのことは沖縄県民にじかに聞いてみれば明白です。

    ケビン・メア氏の意見にも一理があります。とはいえ、沖縄県民に彼の意見に賛同しろといっても無理でしょう。日米両国の安全保障について考えていても、沖縄県民の利益については、ほとんど配慮していないからです。米国としては普天間基地の辺野古への移転をごり押しするのではなくて、日本政府に対して国内他地域への移転に努力するように働きかければ、問題解決に道が開けるのではないでしょうか。彼の「米軍が沖縄に集中的に駐留してしているから、沖縄は中国に支配されずに済んでいる」という見解は牽強付会の論理です。「米軍が沖縄からいなくなれば、中国軍が沖縄を占領する」という守山さんのご意見も非現実的な極論です。

    100万人以上の日本人が住む沖縄県を人民解放軍が奪おうとしたら、日中両国はもう一度、本格的な戦闘状態に陥ります。たとえ戦闘が中国側に有利に展開したとしても、中国は世界各国から侵略国として非難されるだけでなく、経済的にも、外国からの投資は減り、先進国からの環境技術を含む技術支援はほとんど受けられなくなるでしょう。こうなったら、中国は自滅の道をたどるほかありません。そのことを、中国共産党執行部は十分に理解しています。

    産経新聞の古森義久氏は、「米国が沖縄から撤退したら、中国が沖縄を占領する」という見解を取る点においてはメア氏と同じですが、一方で、「中国が米国に求めている新大国関係の狙いは、中国近海の制空権と制海権を米国から取り戻すことにある」と述べています。この見解は正しいと思います。中国は米台条約はもちろんのこと、米国・太平洋艦隊が中国領海を含む東シナ海や南シナ海の制空権と制海権を維持していることに強く反発しています。かつて、経済力が弱かった時はどうにもなりませんでしたが、経済力が飛躍的に伸びた今日では、軍事力の形勢を逆転させよとするのは当然の成り行きといえましょう。

    国家にとって、国防が重要なことはいうまでもありません。しかし、経済の潜在成長力が1%程度の日本が5~6%の経済成長を続ける中国と軍拡競争を続けるのは容易なことではないでしょう。日本は国を守るためにも、外交にいっそうの力を注がなくてはならないと思います。

コメントを書く







コメント内容



Copyright(c) 2012 Striving Senior, All Rights Reserved.