マスコミのあり方めぐり激論ーー11月の勉強会報告

2014-12-01

一般論として、マスコミのあり方については、「多様なニュースやコメントを提供してほしい」「ニュートラルな論調が望ましい」「重要なのは権力監視の姿勢と報道の自由を守ること」「批判は必要だが、不寛容な見方は感心しない」「マスコミの報道は鵜呑みにしてはいけない」などの意見が出されました。しかし、議論は次第に朝日新聞の慰安婦問題と福島第一原発の「吉田調書」問題をめぐる記事取り消し問題に集中して行きました。

朝日新聞に対しては、問題の大筋について朝日新聞出身者から簡単な説明があり、その後、牧野義司さん(毎日新聞、ロイター通信出身)がジャーナリストの立場からこの問題をどう見るかの見解を示しました。その中では、「世直しはメデイアが行うという放漫さ」「記者クラブ制度に安住するメデイアのマンネリ化」「メデイアの編集・経営両面でのガバナンスの欠如」などが鋭く指摘されました。

出席者からは厳しい意見が相次ぎました。とりわけ従軍慰安婦問題については、「誤った可能性の高い記事を検証せず、なぜ30年間以上も放置したのか」「今回の記事取り消しや訂正でも、中途半端な態度を取り、謝罪を避けようとしたのはなぜか」などの疑問が多くの出席者から出されました。「記事を取り消しても、日本の国際的立場を毀損した朝日新聞の責任は免れない」という厳しい意見も出されました。

この議論と関連して、「日本の新聞・テレビが訂正や謝罪を嫌がる傾向があるのはおかしい。欧米の新聞は1ページにわたる訂正・謝罪記事を掲載することも少なくない」「日本の報道の多くは事実の報道ではなく、事実報道とコメントが混在している。このことが大手マスコミの”上から目線”の原因の1つになっているのではないか。事実報道とコメントは切り離すべきだ」という指摘がありました。

以上の報告でお分りのように、この日の討論では、朝日新聞をはじめとする日本のマスコミの今後のあり方について実り多い議論が展開されました。しかし、勉強会は、残念ながら、混乱のうちに終わりました。一部の出席者が「韓国側とごく一部の日本人が、第2次大戦中、日本の軍部が韓国女性を奴隷のように扱ったと主張しているが、そのような証拠はない。しかも、このような問題は日韓基本条約で外交的に処理済みである。慰安婦問題を引きずっている限り、日韓友好回復は不可能だ」と強硬に主張したのに対して、他の出席者が「旧日本軍が韓国人慰安婦を利用したのは紛れもない事実であり、慰安婦問題は今日的テーマでもある。その存在を否定することは許されない」と強く反発したためです。

本来なら、司会者である早房が「今日のテーマはマスコミのあり方であって、韓国人慰安婦問題そのものではない」と割って入り、議論を元に戻すべきでしたが、そのタイミングを逃したために勉強会は混乱に陥ってしまいました。勉強会に集まった「挑戦するシニア」の仲間が自らの主張を包み隠さず述べ合うことは望ましいことですが、他の人の主張に耳を傾けることを忘れるのはよくありません。議論が成り立たなくなりますから。司会者として反省するとともに、皆さんのご理解を強く期待します。
(文責・早房長治)

コメントを書く







コメント内容



Copyright(c) 2012 Striving Senior, All Rights Reserved.