米軍元司令官の異議

2014-11-18

何時も含蓄あるメールを送って頂く先輩から8月に米国ワシントンの大手シンクタンク「ヘリテ

ージ財団」が「歴史が北東アジアの将来の前進を阻む」と題するシンポジウムを開催。日本の慰安

婦問題への態度に対しては米国では日本非難の「米韓大合唱」が起きているが日本擁護とい

う意見こそ少ないが慰安婦問題など歴史問題に関する案件で韓国や中国が日本を叩き続ける

事への反対の声も存在する。このシンポジウムでも韓国側代表の激しい日本非難に対し元太

平洋軍司令官デニス・ブレア海軍大将の言葉は注目に値する。ブレア氏は海軍士官学校卒、

米海軍で各種の軍務に就き1999年から2002年まで太平洋軍司令官を務め2009年から

2010年まで米国国家情報長官任じられた。長い軍人生活の中で安全保障や戦略の学究活動

にも携わり理論派、学究タイプと評されている。アジア地域での勤務も豊富でアジア情勢に

詳しく2014年5月から米国笹川平和財団の会長も務めている。

そのブレア氏がこのシンポジウムで基調演説を行いもう1人の基調演説者は韓国の駐米大使

安豪栄氏だった。ブレア氏は冒頭の演説で「アジアでの歴史の長い影」と題して中国、日本、

韓国の歴史へのそれぞれの姿勢について語った。ブレア氏の発言の骨子は中国の様な独裁政

権は自己の権力の掌握を強めるために過去の歴史上の過ちを利用して国内のナショナリズム

を煽ろうとする。日本や韓国のような民主主義国家も政治権力を強化するために歴史上、自

国が受けた傷や侮辱を利用する。特定の歴史に特殊な思いを抱く国内のグループにアピール

するのだ。独裁でも民主主義でも政治指導者たちは「愛国心が不足している」という非難に

は弱い。一方ほとんどの指導者はナショナリズムはコントロールできると信じている。だか

ら自分達の政治目的にかなう範囲までは歴史にからめてナショナリズムを煽るのだ。しかし

どの国でも健全な愛国主義と偏狭な民族主義を区分するのは難しい。議論が決着していない

過去の歴史的出来事を現在の政策や政治に持ち込むと往々にしてその区分を超えることにな

る。プレア氏は全体として以上のような点を強調した上で中国と日本と韓国について次の様

に指摘をした。「中国は現在の様な形の政府の下では歴史に関して誠実であり続けることは

難しいだろう。独裁政権は自国自身の歴史に脅かされることがよくある。日本は自国より強

いことが明白な米国に対してなぜ戦争を仕かけたのか。この点を徹底的に調査して理解しな

ければ、これからの前進と進歩の前に多様な障害が立ちはだかるだろう。韓国は自国の軍隊

がベトナム戦争でどのような行動を取ったかを調査すべきだ。ベトナムでの韓国将兵は残虐

だったと言われる」。

この様にブレア氏は日本に対して非難を殆ど浴びせなかった。靖国参拝や慰安婦の問題を拡

大して糾弾することもせずその点は米国側の識者や専門家の中では明らかに少数派である印

象を与えた。ブレア氏の演説の後に安駐米韓国大使が基調演説を行った。その主な内容は歴

史問題に関して日本を非難するもので慰安婦を「性的奴隷」とする従来の日本糾弾であった。

すると安大使の日本糾弾を受けるかの様にブレア氏が又発言した。要点は「アジアの歴史を

見ると1930年代から1950年代までの期間に多くの国が大規模な残虐行為を働いた。残

虐な行動が数多く取られ数多くの犠牲者が出た。国と国が互いに残虐な行動を取ったのだ。

アジアは長い年月に渡り残酷な地域だった。だからこの期間の状況についてどの国も「自分

だけが正しい」とか「自分だけに罪がある」と唱えることはできないと思う。歴史に関して

自国が正しく他の国は悪いと主張することは間違っている。歴史問題を黒白で断じるような

態度は長期に考えれば私たちの孫や、またその次の世代のあり方によい影響を与えるはずが

ない」。ブレア氏のこの発言は明らかに韓国が歴史問題に関して日本を責め立てていること

への批判として受け取られた。1930年代といえば日本が軍事拡張を始めた時期である。

一方1950年代といえば朝鮮戦争の時代だった。ブレア氏はその両方の時代に残虐な行動が

数多くあった。この同じシンポジウムで米国人のパネリストには慰安婦問題に関して日本を

激しく非難する人もいた。会場の傍聴者からの発言や質問でも日本糾弾は多々あった。だが

ブレア氏の言葉はそれらとはまったく異なる見解を示していた。歴史問題に対する外部から

の視点は決して単一ではないという例証だった。

 

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