冷たい日中首脳会談の背景、とりわけ中国側の事情ーー守山淳

2014-11-25

 APECで日中首脳会談(中国側は「面談」と言ってまが)が実現しましたが他国の首脳への対応

と安部総理への対応の違いに日本では大きな怒りの声が聞こえます。無表情で背景に国旗も置いて

いませんでした。仮にも一国の宰相を迎えるに礼儀を知らない、という批判があります。私も同じ

感情を持ちました。前回お送りした中国経済を支えているのは日本の中間財であるという事実

えれば習主席はもっと大局的対応をするのが中国の利益にもなるのでは、とも感じました。

これに対し中国事情に精通せる知人が絵解きをして呉れました。

 中国は不幸にして先の大戦での戦場となり多くの庶民が犠牲になっています。今でも家族が殺さ

れた記憶が生生しい人たちも多くいます。それでもポツダム宣言や日中平和友好条約など戦争の性

質と和解の約束が書かれた日中が直接合意した4つの正式文書で将来志向に変わりました。この和

解は周恩来、田中角栄の会談が語り継がれる様に日中の政治家と国民の多大な努力の結果です。し

かし安倍総理は国会で「侵略の定義はない。その人ごとにその立場により違う」と発言し村山談話

についても「安倍内閣はそのまま継承している訳ではない」と新たな談話への意欲を見せ、その上

で靖国神社の参拝をしました。これは中国側から見れば侵略戦争を否定し日中平和条約などの基本

を否定していると映っています。尖閣列島問題もあり安部総理は中国包囲政策を掲げ中国を名指し

で批判しています。日本から見れば力の外交を展開しSF条約などで決着した戦後の秩序を否定し

ているのは中国だ、という強い不満があります。結局は立ち地の違いと鳥と卵でどちらが先に不信

感をばら撒いたのだとなります。中国側からすれば日中平和条約などを無視しわざと中国を挑発す

る日本の総理は過去に居なかった事から安倍総理を諦めて次の総理大臣を待って首脳会談する意見

が支配的だった様です。安倍総理も本心では習近平に会いたい訳ではなかった思いますが多くの世

論が日中関係の改善を訴える中で「ドアは常にオープン」だと言って会わない中国が悪いというポ

ーズを取ってきました。習近主席も大半の日本国民が首脳会談の実現を期待している世論とAPEC

ホスト国としての礼儀もあり今回の面談実現に至ったのが背景だそうです。日本では「日中首脳待

望論」でしたが中国では「習近平-安倍」会談への反対は凄まじかった様です。日本世論は「首脳

会談」ですが中国世論は「安倍氏との会談」というイメージが圧倒的です。今回の面談実現前に福

田元総理が習主席に会っていますが安倍総理の真剣さと安定性に疑念を持っている習主席は福田氏

にその不安と不信を打ち明けたと中国では報道されています。この不安と不信を抱えながら中国国

内の凄まじい反対論にも配慮して実現した今回の面談があの様な無表情な写真になったというのが

彼の絵解きです。表面的現象だけで会談を評価するのが如何に的を得ていないかという教訓になり

ます。言われてみれば小泉総理の靖国参拝の時、中国は今の様な強い批難はしていません。小泉・

ブッシュの蜜月関係や尖閣問題が無かった事など種々時代背景の違いはありますが中国の批判を冷

静に見ていると「安倍総理の右翼化」として右翼化を進めているのは安倍総理個人の問題で日本全

体が右翼化したとは言っていません。この辺りは我々も含め安倍総理以下政権政党は確り分析して

対中国戦略を構築する必要があるのでは、とも思います。

コメント1件

  • 早房長治 | 2014.11.25 10:43

    守山淳さんの中国通の友人の解説は説得力があります。明治時代の現代史において、日本は「加害者」であり、中国は「被害者」であったという双方の立場を、日本人は忘れてはなりません。もっとも、習近平政権の力任せのアジア政策もいい加減にしてほしいと痛感しますが。

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