9月の勉強会2--アベノミクスについてのお二人の見解

2014-09-27

9月の勉強会の前後に、守山淳、福井義夫両氏からアベノミクスについての見解をメールの形でいただきましたので、紹介します。

<守山淳さんの見解>

 私も専門家ではありませんが、アベノミクスは早晩破綻すると思います。

アベノミクスに世界の投資家が注目したのは三本の矢です。特に規制緩和による経済の活性化。日銀の大胆な金融緩和で株高、円安に成りましたが単に銭に目が眩んでいる海外投資家が日本買いをした丈で、日本の投資家は逆に持ち株を売却して利益確保をしました。既に海外に生産拠点を移した製造業が多い事から円安は従来の様な輸出の好調さには結び付かず、逆にエネルギーや食糧の輸入比率が高い事で貿易収支の赤字化定着に成っています。

1100兆円を超える借金を抱えた日本の財政破綻が辛うじて保たれたのはギリシャなどと違い日本には稼ぐ力があると信じられているからです。これが貿易収支の赤字と政府の無駄使いによる財政赤字の改善に繋がらない。

肝心の経済成長を支える第三の矢は見せ掛けだけは良くても安倍政権が本気で実行する覚悟が見えない、という事が段々見えてきて海外投資家が段々と日本離れが始まっています。唯、今までは日本から投資を引いてもそれに代わる魅力ある投資先が無かった為にカネが日本に留まっていましたが最近の米国の景気回復指数などからFRB辺りが金融緩和の出口を探る動きを見せて始めた事でドル買い=円安が急速に進んでいます。

上記した通り円安は物価高を招き庶民の暮らしを直撃。消費が益々減退する事になり力強い景気回復が遠のきます。既にGDPが思った以上のマイナスにも表れていますが、大胆な金融緩和を譲らない黒田総裁ですので他国の出口戦略が実行されると日本は急激な金利上昇リスクに晒され一挙に奈落の底に落ちる危険性が迫っています。唯、日銀は安倍政権の政策を否定する様な動きは現段階では出来ず、10%への消費税率の実行決意の時期が迫っている事もあり、極めて難しい場面に直面しており、コントロール不能になるリスクを感じます。

国際公約の消費税10%を実行せねばねばに日本国債への不信感が増すリスクがあるり、実行すれば更なる消費の冷え込みを招くという袋小路に入りつつあると思います。

成長戦略の目玉である規制緩和は自民党大勝をさせた既得権者と対決する政策ですから選挙も控え自民党議員の抵抗も既得権者の抵抗も強いでしょうから結局実行できないとおもいます。そうなれば今までの株高を支えた海外投資家が日本から逃げる事になります。正に「行くも地獄、戻るも地獄」という事ではないでしょうか。最近の安倍総理を見ていると経済問題には関心が薄く高い支持率の内に彼の悲願である憲法改定の実現を視野に優先している感じがあり、この辺りも投資家は冷静に見ていると思います。

 どうすれば良いか。これだ、という妙案はないと思います。経済の基本である「入るを図り、出るを制す」も、消費増税の時に国民に約束した国会議員の定数削減も無駄使いをやめることも実行する積りは全くない感じです。例の号泣会見で有名になった地方議員に認められた政治政策費は全国ベースで見ると年間約121億円です。世界との比較でも日本の国会議員の歳費+種々の諸手当を入れれば世界で最高レベルです。自分達に痛みを伴う事は目をつぶり取り易い庶民から増税を進める政策では日本は破綻します。破綻しなければ気が付かないのが今の日本の政治家と我々国民ではないでしょうか。

<福井義夫さんの見解>

アベノミクスについて

1.目的

・デフレ脱却

・景気押し上げ

2.政策

・非伝統的手段による金融緩和の強化(2年後に2%の物価上昇が目的)

・拡張政策を先行させる財政政策(公共事業、バラマキ)

・景気浮揚持続のための政策(成長戦略)

3.効果の程は

・金融緩和による円安、株価上昇は一応狙い通り(景気向上の期待感の醸成)

・公共事業、バラマキにより一時的には好景気と錯覚させる、但し一過性に

過ぎない

・消費増税を見越した駆け込み需要もあり、国民消費は一時的に増加した。

・現状国民消費は減速しているが、これを消費増税の反動と見なせるかどう

かこれからが正念場(4~6のGDP指標は年率換算前期比マイナス7.1%)

・成長戦略は何も具体化されていない(看板のみ、又即効性はなし)

4.今後はどうなる

・国民消費減速の如何によっては、補正予算が必要となろうが出来るかな?

・国際公約の2%の追加消費税増税は実施せざるを得ないであろう

・物価上昇目標2%の達成後に起こるであろう金利上昇に耐え得るか

・財政収支の均衡はどうなる

政府は平成20年にプライマリー収支均衡の目標を掲げているが、例え

達成できたとしても、その時点における財政収支の赤字は成長率(名目+

3%)としても約50兆円に達しているとの試算もある。

・このままの財政政策を続けるためには、大幅な歳出削減または、消費税

増税(20%程度)が必要となるのではないか。国民がこれに耐え得るかど

うか。経済成長が回復すれば別だが、今の日本の実体経済の状態では期待

薄の様に思える。

5.景気の好循環が生じているとは思えない。近き将来アベノミクスは失敗との

評価が下されであろうが、その時には彼は政権の座にはいないであろう。

気楽な稼業。

 

 

プライマリー収支

国債発行による借金を除いた税収など正味歳入と、借金返済のための

元利払いを除いた歳出(社会保障費と地方交付税)の収支。収支が均衡していれば、借金に頼らず元利払い以外支出を賄えている。90年代初めから国のプライマリー収支は赤字が続く。政府はこの黒字化を財政健全化の「一里塚」と位置づけているようだ。

 

財政収支

国債発行収入を含む歳入と国債返済の元利合計を含む歳出との差。

 

財政収支赤字50兆円とは;

地方交付税(100%カット)

公共事業(100%カット)

社会保障費(100%カット)

これでもまだ不足である。

 

経常収支:下記の各収支をまとめたもの

貿易収支

所得収支(直接投資などからの収益等)

サービス収支(保険、弁護士費用等)

経常移転収支(政府間援助など)

2013年度の貿易収支は13兆7488億円の赤字(3年連続)、この赤字

を所得収支で補うことにより、経常収支はなんとか黒字を保っている。

 

経常収支の赤字:

・国内の経済的な富が国外に流出することになる。

・国内の資金で財政赤字をファイナンスする術がなくなる。

・政府発行の国債を海外の投資家に買ってもらう必要がある。但し10年

国債の利回りが大幅に上昇即ち、国債価格が急落し金融市場の混乱を

招く。

・赤字からの脱却には、国内企業の競争力を高め、所得収支の黒字幅を拡

大する以外になさそうである。

以上

 

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