集団的自衛権の行使に批判集中ーー5月の勉強会報告

2014-05-18

 5月の勉強会は「国のかたち――集団的自衛権を中心に、改憲問題も」というテーマで18人の仲間が集まって開かれました。集団的自衛権の行使に賛成の人も数人いましたが、全体としては憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を強行しようとする安倍晋三政権に批判が集中しました。また、20代~30代の若者層に賛成が多いことをめぐって「若者たちは何を考えているのか」「彼らは本当に他国のために戦って死ぬ覚悟があるのか」という疑問が数多く出されました。

 安倍政権への批判は「不戦の憲法を捨てるな」というような抽象的なものばかりでなく、「集団的自衛権の行使によって、具体的にどのようなプラスがあるのか」「日米の力関係からして、結局、日本はイラク戦争のような米国の不正義の戦争に巻き込まれるのではないか」「それを防ぐための歯止めはできないのではないか」などの具体的な疑問・懸念が表明されました。「安倍政権が提起している安全保障上の危機の大部分は個別的自衛権の範囲で対応できる」との意見も出されました。

憲法解釈の変更によって実質的に憲法9条を否定しようとする手法には、改憲に賛成している人も含めて、ほぼ全員が批判を口にしました。「安倍政権のやり方は重大な問題を政府与党だけで決めようとしている。国民を無視している」というものです。「このままでは、国論は分裂し、政治への不信は高まるばかりだ」「このようなやり方は将来に大きな禍根を残す」という意見も出されました。

国際的観点からの懸念も表明されました。「日中、日韓の関係はいっそう悪化する恐れがある」「従来、親日的であった東南アジア諸国が第2次大戦後初めて日本の右傾化を心配し始めている」「米国は表面的には集団的自衛権の行使を支持しているが、反対意見もある。オバマ政権も本心は、憲法9条を否定する改憲に反対ではないか」などが代表的なものです。

「自衛隊員の心情にも配慮すべきだ」という指摘もありました。集団的自衛権の行使問題に対して自衛隊の慎重な姿勢が目立つからです。「自衛と他国を守ることは次元の違う問題。彼らが戸惑うのは当然だ」「米国の戦争に巻き込まれそうになったら、除隊希望者が続出するのではないか」という発言がかなり出ました。

「なぜ若者に集団的自衛権の支持者が多いのか」という問題は、今回のデイスカッションの主要テーマに1つとなりました。支持の多い理由としては「戦後約70年を経過し、40歳代以下の国民は戦争の悲惨さも戦後の貧しい時代も知らないから」「若者は歴史教育をまったく受けていず、日本がアジア諸国を侵略したという事実さえ知らないから」といった指摘が多数出ました。このように支持の理由は理解できるのですが、戦争の記憶を持っているシニアにとっては、やはり違和感は否定できません。「若者に戦争の悲惨さを理解させるのに、どうしたらいいか」という点にも話が及び、「韓国のように2年程度の兵役を課したらどうか」という提案もありました。しかし、簡単に答えが出る問題ではないため、突っ込んだ話し合いは次回会合に譲ることになりました。

国のかたちを変えかねない重要問題に対するマスコミの感度の鈍さと追及の不十分さに対する批判は激しいものがありました。取り上げ方が表面的で、問題の本質を突いた報道や論評が極めて少ないという指摘です。これに対してマスコミ出身者から弁明と反論がありましたが、出席者の大部分は「マスコミがもっと頑張ってくれなければ、安倍政権の立憲主義を踏みにじるようなやり方を阻止することはできない」という認識で一致しました。

最後に、少数ですが、「国の安全を守るために,前文、9条を含む憲法改正をすべきだ」「集団的自衛権の行使に賛成する。絶対必要にならない限り使わなければ弊害は生じない」という意見が少数ながらあったことを報告します。

5月16日、安倍首相の私的諮問機関「安全保障の再構築に関する懇談会」が首相に答申を提出し、首相は同夕の記者会見で、政府の考え方を示す「集団的自衛権の行使問題の基本的方向性」を表明しました。安倍内閣はできれば8月中にも憲法解釈を変更することを閣議決定する方針です。これによって集団的自衛権の行使への動きは本格化します。

「挑戦するシニア」は安倍政権の動きを追いながら、6月3日(火)の次回勉強会でも集団的自衛権の行使問題と憲法改正問題を話し合いたいと思います。仲間の皆様がこれから1か月、多少の時間を費やして「集団的自衛権の行使問題をめぐって国論が分裂しないようにするには、どうしたらいいか」のアイデイアづくりに励んで下さることを期待します。

 

(文責=早房長治)

 

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