日本外交のあり方めぐり激論ーー4月1日の勉強会

2014-04-07

4月1日勉強会報告

4月1日に開かれた「挑戦するシニア」第3回勉強会は、16人が「日本外交、これでいいのか」をテーマに約2時間半、激論を展開しました。日本外交の現状はできるだけ早く改善しなくてはいけない、ということでは意見が一致しましたが、日本と中韓両国の間で争点となっている靖国神社の参拝問題や韓国の従軍慰安婦問題では、同世代の勉強会メンバーの間でも認識が大きく異なっていることが分かりました。

日本の外交が中韓や欧米に比べて後れを取っている原因としては、①安倍晋三首相以下の政府の世界の動きに対する鈍感さ②戦略の欠如③外交官の努力不足などが挙げられました。例えば、中韓だけでなく米欧にも評判の悪い首相の靖国参拝については、首相の目は国内にばかり向いていて、世界各国がこの問題をどのように見ているかをほとんど認識していません。その結果、参拝理由についての対外的説明はゼロに等しく、世界のリーダーたちは首相の行動を理解できなかったという点で、出席者の見解は一致しました。もっとも、靖国参拝そのものについては、「日本の首相としては当然」という人が数人いました。

従軍慰安婦問題、日韓併合問題、それとつながる安重根の伊藤博文総督暗殺の問題については、意見はさらに分かれました。日韓併合は日本の植民地政策であるという意見に対して、「併合は朝鮮側の要請に基づくものである。併合後、日本は多くのインフラを整備し、朝鮮半島の近代化に貢献した」という反論が出ました。従軍慰安婦問題については、「女性の人権問題として弁明の余地がない。『従軍慰安婦を利用したのは日本ばかりではない』というような主張を繰り返せば繰り返すほど『日本は女性の人権を尊重する気がない』と世界から受け取られるだけだ」という意見が多数でしたが、「強制的に慰安婦にしたという証拠はない」「強制連行したのは日本の軍人や警察官ではない。朝鮮人の警官である」といった反論もかなり出ました。

議論は、当然のことながら、従軍慰安婦問題や歴史認識問題をどう解決するかに進みました。こうした問題で加害者側と被害者側の認識が一致することはほとんど望めません。この「高い壁」を前に議論は難航しましたが、終わり近くに出た「日本人はアジア諸国に対して加害者であることを忘れてはいけない。加害者側が謝らない限りこれらの問題を解決することは不可能だ」という発言には、多くの出席者がうなづいていました。

こうした議論の中で、安倍政権の外交政策や安全保障政策の策定・運営のやり方について、厳しい批判が数多く呈されました。靖国参拝や従軍慰安婦など外交課題だけでなく、集団自衛権、特定秘密保護法、武器輸出三原則の改定などの問題の処理でも国会議員の数の多さを頼んだ強引さが目立ち、それが国論を分裂させているという指摘が多く出されました。「国論が分裂している時に、外交が成功するわけがない」ということを慮っての意見です。

「第2次大戦後の日本外交は戦略に欠ける」という点に関しては、大部分の出席者の見方が一致しました。現状を改めるには中長期的な戦略を構築しなければなりません。戦略の内容としては、「友好関係が続いているアセアン(東南アジア諸国連合)をさらに重視し、日本の資金と技術でインフラを整備することを通してウイン・ウインの関係を築けば、経済だけでなく、安全保障など他の分野でも濃密な協力関係を構築できるだろう」という提案があり、多くの出席者の支持を集めました。

このほか、この日の会合で出された重要な問題提起は下記の通りです。

● マスコミの日本外交についての報道には問題がある。自虐的な報道・論評は止めるべきだ ● 政府は、日本の官民が世界にとっていいことをした場合、もっと積極的に”宣伝”するのがいい ● 日本が外交面で主張を実現するためには、国力を充実させる必要がある。とりわけ、経済力を回復・強化すべきだ ● 若い人々に近・現代史教育を施して歴史的事実を正確に教えるとともに、外国やその人々を理解する手立てを与える

議論の総括は、従来と同様、行いませんでした。近い将来、再び「日本の外交のあり方」をテーマとして取り上げことがあると思いますが、その機会に、できれば総括したいと考えております

(文責=早房長治)

コメント1件

  • 早房 長治 | 2014.04.15 14:34

    (以下は小林昌三さんから送られてきたコメントです)

    早房 長治 さま
    “挑戦する シニア ” みなさま へ

    4/1/2014 早房 さん事務所にて 「第三回勉強会」 まとめ 、拝読しました。 流石に 早房さん一文は簡潔で分かりやすく、当日 16名の 論客(?)による 様 子を彷彿とさせるものでした。

    目下、日本が直面する諸問題、要領よく Sum Up してあり、大変 勉強になりました、有難うございます。
    シニア 読者の みなさんも 良く 理解できたものと 思慮します。

    『待ったなし、日々刻々と変化する国際情勢』 で 日本の 立ち位置と今後の 進路は 誰もが関心を持つ重要なテーマであり、それを リード する 安倍首相・自民/公明連立政権 の責任は 言うまでも無く 重大だと考える。

    相手との交渉を必然とする 外交は 、日本的な 義理人情や マアマア~でお茶を濁す中途半端な姿勢では進展はなく、むしろ 国益を損なう結 果になる。
    冷静に、合理的・客観的な 総合的判断 が必須でありましょう。

    一方、当地(国)のマスメデイアで 昨日(4/7) トップ・ニュースで Tony Abott 首相 日本訪問の様子が取り上げられ、 MH-370 行方不明と 同じく 繰り返し 報道されている。4月8日も それが 続き 豪州人にとり、日本との関係・関心が 如何に高く  、大切であるか を改めて 認識させられた。
    ご承知の如く、貿易関係で 日本は 世界で2番目に significant and important relations、中国との 貿易がこの1年間 以上 不調なこともあり TV解説委員 など 経済面ならず 安全保障分野でも 日本の強力な バック アップと協調 が欠かせない・・・・・大方の支持を得ている。

    日豪EPA 交渉は7年越しの課題であり、昨夕の 安倍・Abott 両首脳の記者会見で発表の如く、なるべく早期に締結 をめざし 大 筋合意  は 双方にとり 誠に 喜ばしいことである。

    今回、日本との会談で 相当進展を見たので おそらく Abott 連合政権は 当分 安泰ではないか?

    民主主義の 価値観を 共有でき、対話の 道が Open になっている 豪州とは 今後も 是非 良好な関係を 維持 さらに発展させたい ものである。

    豪ヒマ人 より

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